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AWS内で多様な生成AIを利用してアプリ開発ができるAmazon Bedrockとは

summary

AIを活用したウェブアプリケーションを開発する方法はいくつかありますが、最新のAIモデルを利用し、安定的な運用を実現する方法となると限られてきます。そのひとつが、Amazon Bedrockの利用です。

多くの企業がAIの活用に乗り出していますが、クラウド上、特にAWS上でのAIを使ったシステムを開発するならば、AWSのフルマネージド統合AIプラットフォームであるAmazon Bedrockは、最適な選択肢と言えます。

Amazon Bedrockは、Anthropic、Meta、AI21 Labsなど、複数の大手AIプロバイダーの基盤モデルを、AWSの内部で単一のAPIとして利用可能であり、テキスト生成から画像生成まで幅広いAIタスクに対応します。

インフラ管理が不要のフルマネージド特性、AWSサービスとの高度な親和性、柔軟なモデルラインナップが特徴で、すばやいAIシステムの開発と、継続的に改良を行ううえで最適な環境です。

Amazon Bedrockの主な特徴

Amazon Bedrockの主な特徴は以下の通りです。

1.マルチモデル対応

Anthropic、Meta、AI21 Labs、Stability AI、Amazonといった複数ベンダーの基盤モデルがAWSの内部で動作しており、かつ単一のAPI経由で利用可能。これによって開発するAIシステムの用途や、求めるパフォーマンスに応じて最適なモデルが選択可能。

2. 統一API

AWSのREST APIとAWS SDKを通じた、一貫性のあるインターフェースで利用できる。これにより、開発したAIシステムにおいて、利用するAIモデルを異なるモデルに切り替えたり、AIモデル同士を比較したりが容易となる。

3. AWSエコシステムとの統合

IAM、CloudWatch、VPCなどのAWSのサービスとシームレスに連携できる。既存のAWSインフラストラクチャやワークフローへの統合が容易。

4.カスタマイズオプション

ファインチューニングやカスタムモデルのデプロイメントをサポートしているので、組織ごとのニーズに合わせたモデルの調整が可能。

5.セキュリティとコンプライアンス

AWS KMSを用いたデータ暗号化、VPC対応、IAMによるきめ細かなアクセス制御を利用可能。HIPAA、SOC、PCI DSSなどの国際的な規制要件にも対応。

6.スケーラビリティ

AWSの協力でスケーラブルなインフラストラクチャを利用することで、需要に応じた自動的なスケーリングにより、高負荷時のパフォーマンスの確保。


ここで挙げた特徴のなかから、いくつかポイントを絞って詳しく説明しましょう。

Bedrockの最大の利点はAWSのサービスであること

Amazon BedrockはAWSエコシステムの一部として設計されているので、新たなAIを利用したシステム開発においても、現行のAWS環境をそのまま活用できます。AWSアカウントを持つユーザーなら、追加の契約や環境構築が不要で利用でき、AWSコンソールやAPIを通じてAIモデルにアクセスできます。

また、他のAWSサービスとAWS内部でシームレスに統合されているので、AWS SDKを通じて、開発済みのAWSベースのアプリケーションへの追加がスムーズに行えます。AWS CLI、CloudFormationなどのツールもAI開発に使用できるため、普段の開発環境でAI機能の実装が容易でもあります。

さらに、アクセス管理ツールであるAWS IAMとの統合により、運用中のセキュリティポリシーや権限管理を、これから開発するAIシステムにも適用できるため、セキュリティ管理の一元化を実現します。

豊富な基盤モデルに対応し、その切り替えも容易

Amazon Bedrockは、以下のような多様な基盤モデルを提供しています。

  • テキスト生成(Claude、Llama 2、Jurassic-2など)
  • 画像生成(Stable Diffusion XLなど)
  • Embedding(Titan Embeddingなど)
  • 音声認識(Whisperなど)
  • 音声合成(Pollyなど)
  • マルチモーダルモデル(Claude 3など)

これらのモデルはAWSだけではなく、Anthropic、Meta、AI21 Labs、Stability AI、Cohere、Mistralなど、複数のAIプロバイダーから提供されています(残念ながら、OpenAIのモデルは含まれていませんが、通常のウェブアプリの開発のようにAWSからインターネット経由でOpenAIのAPIを利用することは可能です)。

ユーザーは、Bedrockのコンソールで利用可能なモデルの一覧から用途に応じて最適なモデルを選択し利用できます。AWSの統一されたインターフェースを通じて操作するため、異なるプロバイダーのモデルを使う場合でも、一貫した操作感でAI開発を進められます。この多様性と統一性を合わせ持つことによって、幅広いAIタスクや要件に応じた柔軟なアプリケーション開発ができます。

Amazon Bedrockの活用例:ナレッジベース構築

Amazon Bedrockを使用したナレッジベース構築によって、企業における情報管理を効率化できます。例えば、AWSのクラウドストレージであるS3バケットにドキュメントファイルを保存するだけで、Bedrockが自動的にその内容をベクトル化します。

さらに、ユーザーは自身でベクトルストア(エンベディングされたデータの保存と検索のためのデータベース)の設定やエンベディングモデルの指定も可能で、特定のユースケースに最適化できます。つまり、複雑なコーディングなしでRAG(Retrieval-Augmented Generation)システムを構築できるというわけです。

これにより、質問応答や文書検索といった機能を簡単に実装できるほか、ナレッジを活用したチャットボットの構築と運用のハードルを大きく下げてくれます。さらに、他のAWSサービスとのシームレスな連携により、より複雑で高度なナレッジマネジメントシステムの構築が可能です。

リージョンごとに異なるAIモデルと利用料金

Amazon Bedrockの利用にあたっては、いくつか気を付けたいポイントがあります。それは、リージョンと料金体系です。

利用可能なAIモデルはリージョンによって異なっており、最新のAIモデルは米国リージョンで先行導入されます。他のリージョンには、後から順次展開されるほか、リージョンによって利用料金も異なることがあります。

Amazon Bedrockの料金体系は、大きく2つに分かれています。

  • オンデマンドモード:使用量(AIモデルに入出力した文字数やデータ量)に応じた従量課金制で、必要な時に必要な分だけ利用できます
  • プロビジョンドスループットモード:事前に時間単位での定額料金を支払う方式で、長期的かつ大規模な利用に適しています

オンデマンドモードでは、AIモデルのキャパシティによっては、一時的に利用できない場合があります。つまり、パフォーマンスはベストエフォートのため、利用者が多いとレスポンスが返って来なかったり、エラーとなったりすることがあります。

そのような状況下でも安定した利用を確保したい場合は、プロビジョンドスループットモードを選択することで、安定的にリソースを確保できます。

正直なところ、2024年10月現在、オンデマンドモードは数回のリクエストでエラーとなってしまうことが多く、継続的に利用するならばプロビジョンドスループットモードの選択が現実的です。

AWSだからこその充実した資料と活発なコミュニティ

Amazon Bedrockを利用する上での魅力のひとつは、包括的なサポート体制です。Bedrockの機能や実装方法を解説した公式ドキュメントが充実していることに加えて、活発なAWSコミュニティにおいて開発者同士でコミュニケーションをはかり、ノウハウやチップスを積極的に共有しています。

さらに、Langchainなどのサードパーティが開発したLLMアプリケーションフレームワークとの連携も積極的にサポートしています。Bedrockに特化した専門書も出版されており、深い理解と実践的なスキルの習得に役立ちます。

最後に主要な競合サービスと比較してみましょう。

Microsoft AzureのAIサービスは、主にOpenAIのモデルを中心に展開しています。GPT-4やDALL-Eなど、高性能な言語モデルや画像生成モデルへのアクセスを提供していますが、モデルの選択肢は比較的限定的です。

Google Cloud Vertex AIは、GoogleのAI技術を活用したサービスで、自然言語処理や機械学習モデルの開発・デプロイメントをサポートしています。Google独自のモデルを中心に据えており、特にテキスト・画像解析、予測分析などの分野で強みを持っています。

一方、Amazon Bedrockは、複数のAIプロバイダーのモデルを統合的に提供している点が特徴です。Anthropic、Meta、AI21 Labs、Stability AIなど、様々なプロバイダーのモデルを単一のプラットフォームから利用できるので、利用者は用途に応じて最適なモデルを選択し、柔軟にAIソリューションを構築できるのは大きなメリットでしょう。


Written by
CEO

堀家 隆宏

Takahiro Horike

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