「Postman」は、Web APIの開発やAPIを利用したシステム開発を効率化するためのプラットフォームです。多くの企業やエンジニアに利用されており、Postman日本法人でテクノロジー・エバンジェリストを務める川崎氏によると、グローバルでのユーザー数は約3,500万人、日本国内では約50万人にものぼるとのことです。
Postmanの主な特徴は、「設計・モック」「デバッグ」「自動テスト」「ドキュメント作成」「監視」「公開」といったAPIライフサイクルの各ステップを容易に実施できる点です。また、APIのマーケットプレイス機能も備えており、SalesforceやSpotifyといったサービスのAPIをPostman経由で利用したり、自社開発したAPIを一般向けに公開することも可能です。

APIを利用する際のテストでは、curlコマンドを手動で実行したり、パラメータを変えながら何度も繰り返したりといった作業が煩雑になりがちです。Postmanでは、これらのテストをグラフィカルなインターフェースから実行できます。操作は、Webアプリケーションだけでなく、Mac、Windows、Linux用のデスクトップクライアントからも可能です。
Postmanは、元々Yahoo!インディアのエンジニアが自らのAPI開発を効率化するために開発したツールでしたが、後にスピンアウトしてPostman Inc.が設立されたという経緯があります。エンジニアが自ら使うために開発したツールであり、現在でも「開発者ファースト」を強く打ち出しています。
APIの利用と提供双方のライフサイクルを管理
Postmanの機能について簡単に解説します。Postmanは、デスクトップアプリまたはWebブラウザからリクエストを送信するクライアントツールとして機能します。バックエンドやゲートウェイ側のサービスと勘違いされることもありますが、実際にはエンジニアがAPI開発における設計、実装、テスト、監視といった様々な作業を行うためのクライアントです。
画面を見ればわかるように、マイページでは作成・登録したAPIを一覧表示でき、各APIのテストコード作成やドキュメント閲覧を一元的に行えます。基本的にローコード・ノーコードを念頭に開発されており、テストコード作成時も、メニューから実行したいテストを選択し、必要な項目を選ぶだけで自動的にテストコードが生成されます。もちろん、自分でJavaScriptのコードを記述することも可能です。

Postmanは、多様なAPIプロトコルをサポートしていることも特徴です。多くのAPIはREST APIですが、その他にもGraphQL、gRPC、WebSocket、MQTTといったプロトコルをサポートしており、大規模なエンタープライズシステムから、チャットベースのAIアプリケーション、IoTなど、様々なジャンルのシステム開発をカバーできます。有償などの理由で利用時に認証や認可が必要なAPIでも、Postman上で設定を行うことで、自動的に認証・認可処理を行った上でAPIのテストを実行できます。
Postmanが目指す良い開発者体験とは
Postmanは、API開発やAPIを利用したモダンなWebアプリケーション開発において強力なツールです。現在では、Postman以外にも様々なAPIクライアントがリリースされており、単なる開発サポートツールとしてのAPIクライアントという視点で見れば、Postmanの競争優位性はそれほど大きくないと川崎氏も認めています。しかし、マーケットプレイスのようなAPI利用者と提供者をマッチングする場を提供するなど、エンタープライズレベルのAPI開発におけるGitHubのようなプラットフォームとしては、Postmanが抜きん出た存在です。
世界中の公開APIをジャンル別にリスト化しているため、ドキュメントを参照しながら必要なパラメータや認証設定を行うといった手間を最小限に抑え、すぐにAPIを試すことができます。Postmanでは、「APIを使おうと考えてから、最初にAPIを呼び出すまで」の時間を「Time To First Call(TTFC)」と呼び、このTTFCをできるだけ短縮することで開発者体験を高めることを重視しています。
せっかく開発したAPIが公開されても十分に活用されないことがあります。その主な理由として、ドキュメントが不足している、API自体が見つけにくいといった点が挙げられます。また、利用者の大部分が製品機能のごく一部しか利用しておらず、APIに対する理解度があまり高くないといった状況は、API利用者と提供者双方にとって不利益です。Postmanは、様々な機能を通じて、これらのAPI利用に関する課題を解消し、開発者体験を向上させることで、より多くのAPIが活用される世界の実現を目指しています。