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業務ツールからAIまで、自ら手を挙げ取り組む内製化チーム――戸田建設様の場合

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DXの一環としてITシステムの内製化に取り組む事業会社が増えています。しかし、内製化を進めるに当たって、IT人材の不足に悩んでいる企業も少なくありません。IT人材に限らず多くの企業が人手不足に悩まされ、新規採用やリスキリングに尽力しています。

私たちのお客様にも、社内の非IT人材からITの素養を持つ人材を発掘し、リスキリングに取り組んでいる企業様が多くいらっしゃいます。そうした企業のなかでも、高い成果を上げていらっしゃる企業のひとつが戸田建設様です。

事例でもご紹介しているように、戸田建設様は非IT部門からの選抜社員に対して、大学でのリカレント教育を経た人材をDX推進室に配属。その社員によって、業務システムやAIによる自動議事録作成ツールなどを開発し、実際に業務に活用しています。

戸田建設様が実際にどのようにリスキルおよび内製化を行ったのか、これまでの事例記事を元にご紹介しましょう。

DXが進む建設業界、リスキルと内製化で挑む戸田建設

戸田建設様は、1881年に創業し、高層ビルの建設からトンネルなどの土木事業まで幅広く手がける建設会社です。戸田建設様に限らず、建設会社は今、人手不足や安全強化、サステナビリティなど、多くの課題を抱えています。

こうした課題に対して、従来の業務のやり方では対応が難しいとして、建物の構造や材料、各部署の仕様や性能、部材の価格など、建物に関わるあらゆる情報を統合した上で、3次元モデルとして見える化するBIM(Building Information Modeling)の導入を初めとして、業界を挙げたデジタル化が進められています。

しかし、年間で300以上もの建築・土木の現場を抱えており、そうした現場で使うITシステムは、誰もが、簡単に使える必要があります。そうした“現場で使えるツール”を開発するためには、従来のような事前に要件を洗い出して、綿密な計画に基づいて作りあげるウォーターフォールでのシステム開発は馴染みません。

目的実現において最低限必要な所からシステムを作り、実際に使った現場の意見を取り入れながら、継続的に改良を続けるアジャイルな方法でないと、実際に現場で使い続けられるシステムを作ることは難しいです。

そうした、内製化による持続的な改良のサイクル、すなわちイノベーションサイクルを実現するために、戸田建設様ではリスキリングによるIT人材の育成に乗り出しました。東洋大学情報連携学部(INIAD)でのIT研修に対して全社に希望を募り、そこでの教育を経て、さらに試験で選抜した10名によってDX推進室を発足しました。

メンバーが自主的に開発に取り組む前向きムード

この10名は全員が非IT部門の出身で、開発経験がありませんでした。そこで、私どもによるインフラ設計やフロントエンド開発などの講座を2週間に1~2回のペースで実施。さらに実際の開発にあたっては、設計書・コードのレビューや定期的なミーティング、さらにSlackを介して随時Q&A対応などのご支援を行いました。

初期には、VR空間でのバーチャルオフィスを使った定例ミーティングを行ったところ、多くの戸田建設様の社員が集まり、質問待ちの行列ができたこともありました。その後はWeb会議やSlackでの対応がメインになりましたが、この数年間で皆さんからの質問がどんどん技術的に高いレベルになって行くのを目の当たりにしました。

こうしたIT教育やご支援の結果、戸田建設様では「ToLabel」という建設現場における事務作業を効率化するための業務効率化プラットフォームや、自動議事録作成ツール「Make-Minutes」を、社員自らの手で開発し、実際に業務のなかで活用しています。

さらに、これらのツールは、一度完成したらそのままではなく、現場からのフィードバックを元に改良したり、機能追加をしたりと、運用しながら継続的な開発が行われています。DX推進室のメンバーは、入社以来、設計部門や建築現場の管理などに10年以上も携わっていたという、まさに建設のプロばかり。そうしたドメイン知識を持つ人材が、ITを学び、現場と一緒になって必要とされるITシステムを作っています。

興味深いのは、こうしてDX推進室で開発されるITシステムは、現場発の課題やニーズが起点となっているものだけでなく、DX推進室のメンバーの技術的な興味関心が起点となっているものもある点です。実際に自動議事録作成ツール「Make-Minutes」の場合は、DX推進室の佐藤室長が思いついた生成AIの活用アイデアを情報共有ツールに投稿し、それを見た平林さんが興味を持ち自主的にPoCに取り組んだことがきっかけでした。

こうしてDX推進室では、社内からの要望だけでなく、DX推進室メンバーの興味関心に基づいた取り組みが合わさって、多くの開発が行われているそうです。現在は、BIMの3Dデータを活用して画像生成AIの「Stable Diffusion」で建築パース(設計図を元にした建築物の外観の完成予想イラスト)を生成するという取り組みも行っているそうです。

IT人材の育成とイノベーションサイクルを理想的な形で実現

先のエントリー「ITが本業ではない事業会社でも、クラウド上でのシステム開発を内製化すべきメリット」において挙げた論点、

  • イノベーションサイクルの加速:内部にスキルやノウハウが蓄積。同時に開発スピードも上がるため、新しいことへ取り組むことができベンチャースピリットが培われる
  • コストの削減:外注によってプロジェクトマネジメント、スタッフ間のコミュニケーション、そして人件費が嵩むが、内製化することで基本的にこれらが削減できる

を戸田建設様では、理想的な形で実現しています。それに加えて、

  • どの分野、どの業界の会社でもITの素養を備えた隠れIT人材が2パーセントいる。この人材を見つけ適切にリスキルすれば ドメイン知識を備えた優れたIT人材として活躍する

という観点でも、見事に人材の発掘を成功させました。同時に、こうして発掘した新たなIT人材がモチベーション高く手を動かせる環境作りも行っています。この全体の取り組みについては、ご支援する側の私たちも非常に学ぶところが多かったです。

私たちは戸田建設様だけでなく、他にもこうしたご支援を数多く行っております。内製化推進にあたって、壁を感じている方、どこから手を付けてよいのか迷われている方がいらっしゃいましたら、一度ご相談ください。

Written by
編集部

Serverless Operations編集部

Editing Department

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