AWS Marketplaceに出品できる製品の種類
Amazon Machine Image(AMI)
Amazon EC2にソフトウェアをインストール、設定してそこからAMIを作成したものを出品することができます。特にそのソフトウェアのインストールやチューニングのコストに大きな労力がかかるものであれば、マーケットプレイスで販売する付加価値は増えるでしょう。例えば日本だと高速にWordPressが稼働するように最適化されたAMIであるAMIMOTOが有名なのではないでしょうか。WordPressのチューニングには大きな労力とそれに特化にしたノウハウが必要となりますが、AMIMOTOを購入することでそれらのステップやノウハウが不要で最適化されたWordPressサイトがAmazon EC2上に簡単に構築できます。
AWS CloudFormationテンプレート
CloudFormationのテンプレートも製品として出品できます。例えば、AWS上でゼロトラストネットワークを構築するCloudFormationを作成して他のクラウドやオンプレミスとセキュアに接続にできるテンプレートを作ったとします。このCloudFormationテンプレートは同様の設定で他社でも流用が可能でしょう。このようなものはAWS Marketplaceに出すことで顧客に付加価値を与えることができます。また、複数のAWSサービスを使うことが必要となるアプリケーションの開発環境をCloudFormationテンプレートとして作成しておき販売するようなことも良いアイデアでしょう。
コンテナイメージ
コンテナも様々なパターンの製品が考えられるでしょう。単純にメジャーなソフトウェアであるMySQLやPythonのみのイメージであったり、Datadogなど監視プロダクトのエージェントなど多種多様な製品がコンテナイメージ化されてAWS Marketplace上に掲載されています。
機械学習モデル/アルゴリズム
モデル/アルゴリズムをAWS Marketplaceに出品するためにはAmazon SageMaker で製品を準備する必要があります。そしてその製品タイプにはモデルパッケージとアルゴリズムがあります。モデルパッケージとはすでに推論が可能なトレーニング済みのモデルです。一方、アルゴリズムは、トレーニングのアルゴリズムのみが提供されているパッケージなためトレーニングデータ自体は購入者が用意して独自の推論モデルを作成する必要があります。
SaaS
SaaS製品もAWS Marketplaceに出品可能です。特にAWSと関連が深いSaaS製品ですと出品する付加価値は高くなりますし、単純に販売チャネルが増えると言うだけでも価値があります。例えば、AWSに対してのセキュリティ製品、監視製品、AWSコストの管理などです。これらをAWS Marketplaceに出しておけば、AWS費用の中にそのSaaS製品の費用は含まれますので、社内にSaaS契約の複雑な申請フローなどがある場合はそれらをスキップして購入することが可能になります。弊社ではAWS Marketplace に SaaS を出品するための参考アーキテクチャというブログの中でSaaS製品を出品するための詳細は方法を書いてますので興味があれば読んでみて下さい。
プロフェッショナルサービス
プロフェッショナルサービスとは、AWS サービスおよびAWS Marketplaceの製品の使用方法に関して、評価、移行、サポート、管理、および他の人をトレーニングするサービスのことです。いわゆる人が張り付いてAWSに関しての技術コンサルティングを行うことですね。メリットとしてはAWSの料金にコンサルティング費用が合算されるため、一元管理が可能になったり、AWS Marketplaceを通じた契約になるとこで通常の見積もりから発注のプロセスに比べて迅速な契約が可能なため短期間のプロジェクトなどには適しています。また、プライベートオファーという価格設定がプロフェッショナルサービスでは使用可能です。これを通じた交渉により通常より割引価格でサービスを受けられる可能性もあります。
データセット
AWS Data Exchangeという、AWS のお客様が AWS クラウド でファイルベースのデータセットを安全に交換できるようにするサービスを通してデータセットを販売することも可能です。製品には一つもしくは複数のデータセットをファイルベースで含めることが可能になります。それらはリビジョンという形でバージョン管理をして提供されます。
AWS Marketplace がサポートする課金モデル
以下の課金モデルから出品者のニーズに応じて選択する必要があります。製品のタイプに応じて対応しているものとしていないものがあるためそこは注意が必要です。
課金モデル | 内容 |
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BYOL | 既存の製品ライセンスをAWSに統合するための仕組みです。ライセンスの販売および管理は販売者側が独自に実施します。 |
フリートライアル | 期間を指定して無料で製品の使用を可能にします。 |
従量課金 | ソフトウェアの使用時間単位で課金を行う方法。時間以外にもデータ量や帯域幅をベースに課金することも可能です。 |
月額固定 | 毎月固定料金を設定する方法です。従量課金と組み合わせることも可能です。 |
契約料金 | 一定の使用料をコミットすることでディスカウントを提供する方法です。期間に応じてディスカウント率を調整可能です。 |
プライベートオファー | 顧客ごとに交渉をして価格を決定する方法です。料金だけでなく既約や支払日なども柔軟にカスタマイズ可能です。 |
AWS Marketplaceに出品するメリット
ビジネスチャンスの創出
これは当たり前といえば当たり前ですが、AWS Marketplaceがあるおかげで、特殊なノウハウがないと扱えないようなソフトウェアの扱いを熟知した企業がAMIを売ることによってビジネスにすることが可能です。これは機械学習モデルやデータセットなどにも同様のことが言えるでしょう。
製品販売のチャネルが増やせる
特にSaaSやプロフェッショナルサービスではAWS Marketplaceに出品することで販売チャネルが増やせることはメリットの一つになるでしょう。エンタープライズ企業においては新規サービスの契約において複雑な承認フローが必要になる場合があります。AWS Marketplaceの中で契約を行うことでそれらの複雑なフローを飛ばして迅速にサービスを開始できることは、メリットのある販売チャネルの一つとなるのではないでしょうか。また、プライベートオファーを利用することで特別なディスカウントを行うなど、顧客にあった契約形態を設定できることも営業の手段を増やせるという意味ではメリットがあると思います。
AWSコストと合算できる
これは上記の中でもすでに述べていますが、AWS Marketplaceで購入した製品はそのAWSアカウントの支払いの中に合算されます。製品販売のチャネルが増やせるというところにもつながってきますが、これも複雑な契約のためのフローを飛ばして迅速にサービスを開始できることの一つの要因になるでしょう
AWSによるセキュリティチェックが実施される
AWS Marketplaceに出品する製品はAWS側でのセキュリティチェックが実施されます。AWSのお墨付きということでユーザに安心して製品を提供することができるでしょう
サブスクリプションや従量課金機構をスクラッチ開発する必要がない
自身で特定のサービスなどを使用してサブスクリプションや従量課金の機構を実装する必要がありません。従量課金においても、支払いの単位となる時間やデータ量、帯域幅などの情報をAWS側に送信することで自動的に料金を計算してくれます。
AWSとのパートナー連携強化
AWS Marketplaceに製品を出品することで、AWSとの公式なパートナーシップを強化することが可能になります。例えば、AWS ISV Accelerate Programに参加することでAWS Marketplace上の製品をAWSと共同販売が可能になります。また、AWS主催のウェビナーやカンファレンスへの登壇、公式ブログなどでの紹介などの機会を得る可能性があります。
まとめ
AWS Marketplaceはソフトウェアやクラウドに関わる企業のビジネスの可能性を広げてくれるサービスです。もし、社内で使用しているような秘伝のAMIやコンテナ、CloudFormationなどがあれば出品を検討してみては如何でしょうか。弊社でもいくつかAWS Marketplaceの出品を支援させて頂いた実績がございますので、是非ご興味があればご相談ください。