開発する上でサーバーレスが絶対条件のワケ ――HTBは放送局ですが、三浦さんはそこでどのようなサービスを提供されているんでしょうか。
三浦 コンテンツビジネス局のネットデジタル事業部というところに所属しておりまして、コンテンツビジネス局全体が放送外収入を支える事業部というイメージですね。放送局は企業などに広告枠を買っていただいて、CMを流すことが主な収益になるんですが、私の部署はそれ以外で収益を上げるところです。
例えば、弊社には「onちゃん」というオリジナルキャラクターがいるんですが、そのグッズを販売したり、「水曜どうでしょう」のグッズを売ったり、独自のVODサービスで弊社が製作した番組をストリーミング配信したり、他局が弊社のコンテンツを二次利用する時の権利処理とかをしています。そのなかで私は開発を担当しています。
――放送局で放送以外の仕事となると、とても幅広く手がけることになるんですね。今回、Serverless Operationsには開発支援を依頼したそうですが、どのようなシステム開発に取り組んでいたのですか。
三浦 「onライン劇場」という、有料での映像配信とグッズ販売のECとが一緒になったサービスです。2020年に新型コロナウイルス感染症の拡大によって、各種のオフラインイベントが潰れてしまったので、その代替施策として考えたものです。
もともと2019年に「水曜どうでしょう祭 FESTIVAL in SAPPORO2019」というオフラインのイベントを実施した際、一緒に有料での動画配信の仕組みを作っていたので、それを活用したかったんです。その動画配信の仕組みをテコ入れして、配信ページにShopifyの購入ボタンを貼り付けただけのような形で、最初のonライン劇場がスタートしました。
その当時、動画を見ながら関連グッズを買えるというサービスが見当たらなかったので、自分で作るしかないと思ったのが、アイデアのきっかけです。結果的にある程度、うまくいったので、社内を説得して開発費が出ることになり、不満だった部分を作り直すところから、Serverless Operationsに開発支援で入ってもらいました。
――なぜ、最終的にServerless Operationsを選んだんでしょうか。
三浦 最初のVODサービスの開発を依頼したところも含めて、いくつかの開発会社に相談をしていて、Serverless Operationsもそのひとつでした。もともと堀家さんとは、あるユーザー主体の勉強会で知り合いました。勉強会のライトニングトークで動画配信について話したら、その後の懇親会で堀家さんが声を掛けてくれて、それがとても印象に残っていたんです。
今回の開発にあたって大前提だったのは、サーバーレスで行うことでした。そのわけを私はよく冗談で「宗教上の理由で」といっていますが、それというのも我々の部署にはサーバーサイドエンジニアもネットワークエンジニアもいないんですね。だから、できるだけ開発するときは、コーディング以外のことをしたくないので、サーバーレスという条件は絶対的なものなんです。
私自身、HTBの入社当初は「放送監視」という、放送されている番組を一日中見るという仕事で、それまで開発経験はありませんでした。他のメンバーも電波塔で電源工事をしたり、壁の補修でモルタルを塗ったりと、まったくITとは無関係の経歴の人間ばかり。そういうメンバー達と一緒に、勉強しながら開発しているんです。
だから、できるだけ余計なことはしたくないのですが、開発会社に相談すると、ほとんどがサーバを立てることが前提なんですよね。僕らは、クラウドのなかには極力、なにも置きたくないのに、すぐにサーバを立てることが必要な提案をしてくる。まるでサーバーレスという要望がわがままなことかのように言われると、残念な気持ちになってしまいます。
そこで、AWSのパートナーになっている会社にもいくつか話を聞きましたが、フロントもバックエンドもできるところや、Auth0などの外部のAPI連携に詳しいところとなるとなかなかなくて、そういう区別無しに相談に乗ってくれたところはServerless Operationsだけだったんです。